大阪万博の会場内で起きた「警備員が土下座した」というニュースに、驚いた方も多いのではないでしょうか。
SNSでは動画が拡散され、Yahoo!ニュースには2000件を超えるコメントが寄せられています。
何があったのか知らないけれど、
— 毬谷友子 🕊 TOMOKO MARIYA (@mariyatomoko) April 22, 2025
少なくともこの男性は出入り禁止にすべきだし、公共の場を混乱させた謝罪をすべきと思う。
警備員さんも土下座なんかせず、もっと上の万博協会の人間を呼べなかったのだろうか。。
見ていてとても苦痛です。
そして日本人として恥ずかしい。 pic.twitter.com/RDQpEGT5j5
なぜ土下座なんてことが起きたのか?
客に強要されたの?それとも自発的に…?
この記事では、現時点でわかっている事実を整理しながら、この出来事の背景にある問題を読み解いていきます。
万博で警備員が土下座したのはなぜ?出来事の経緯と背景

①駐車場案内がきっかけに
きっかけは、来場していた男性客が「パーク&ライドの駐車場の場所がわからない」と、警備員に質問したことから始まりました。
この警備員は、その駐車場の場所を正確に答えられず、
代わりに「デジタルサイネージ(電子案内表示)」がある場所を案内しました。
つまり、案内が不十分だと感じたお客さんが不満を持ち、そこからトラブルに発展したという流れです。
そしてその後、警備員が帽子を脱ぎ、地面に両手をついて土下座のような体勢を取る様子が動画で撮影され、拡散されました。
②「土下座しろ」とは言ってない?
この点については、少し情報が食い違っています。
一部の報道や動画の撮影者は、
「客が『土下座しろ!』と怒鳴っていたように聞こえた」としています。
一方で、現場にいたという別の第三者の証言では、
「怒鳴り声はあったけれど、『土下座しろ』とは言っていない」との話もあります。
また、土下座したあとにお客さんが
「誰も土下座なんかしろとは言ってない」と再び怒っていた、という証言も確認されています。
つまり、「土下座しろ」と言われたかどうかは現時点でははっきりしていません。
③警備員はなぜ謝罪を選んだのか
では、なぜ警備員はそこまでして謝る必要があったのでしょうか?
それはおそらく、
「現場の空気をおさめたかった」
「これ以上トラブルにならないように自分が引こうとした」
という、現場で働く人間としての“判断”だったのだと思われます。
ただ、それが土下座という形だったため、
多くの人にとってはショックであり、
また、「そこまでする必要があったのか?」という疑問が生まれました。
この行為は、警備員本人の意思だったかもしれませんが、
客側の態度や現場の緊迫感がそうさせたのでは?という見方も根強くあります。
④万博協会の説明と現場の温度差
万博協会はこの件について、事実として「警備員が土下座したことは確認している」と公式に認めています。
その上で、協会の説明によれば、
- 警備員は「案内できない」ことを謝罪しようとした
- 現場での判断であり、強制されたわけではない
としています。
つまり、協会としては「強要があった」とまでは断定していません。
しかし、SNSではこの説明に対して
「それでも現場を守る人がここまでしなきゃいけないの?」
「この対応が当たり前になったら、現場の人たちは潰れる」
という声が多くあがっており、公式見解と世間の温度差も感じられます。
その場にいた人の証言とネットの反応
ネット上ではこの出来事に関して、驚きや怒り、戸惑い、そして「よくある話じゃないの?」という声まで、さまざまな反応が広がっています。
でも、その中で注目したいのは、実際に現場を見ていたとされる第三者の証言や、冷静な視点を持った人たちの投稿です。
そこには、ニュースだけでは見えない“もうひとつの景色”がありました。
①第三者による現場の証言
SNSの投稿の中には、当事者の家族と思われる人物が投稿したと思われるスレッズもありました。
そこにはこう書かれていました。
警備員は横柄な態度で仁王立ちしていた。
それに対しておじさんが怒り、「謝れ」と怒鳴った。
土下座は求めていなかったが、警備員が自ら謝った。
その後、おじさんは連れられながらも「ありがとう、気分悪くしてすまんな」と口にしていた。
…この証言だけを読むと、単純な“カスハラ”とも違って、
誤解と感情がぶつかり合った複雑な空気が感じ取れます。
当事者どちらかが悪いというより、「かみ合わなかった」という言葉のほうがしっくりくるのかもしれません。
②撮影者視点だけで報じられた違和感
今回のニュースでは、「動画を撮った人」の視点だけが大きく取り上げられた印象があります。
でも実際には、他にも見ていた人がいて、そこから見える光景は少し違っていたようです。
ある人は「怒っていた男性はその後、落ち着いて家族と帰っていった」と言い、
また別の人は「警備員が対応しきれないのは万博の運営側にも責任がある」と指摘していました。
つまり、「撮影者のカメラが見ていたもの」=「全ての真実」ではないということ。
“一枚の写真”や“30秒の動画”には映らない感情や背景があったと考えるのが自然です。
③SNSでは警備員への同情が優勢
ネット上の多くのコメントを見ると、警備員の立場を気遣う声が非常に多くなっています。
- 「土下座までさせられるなんて、おかしい」
- 「怒鳴るのは論外。警備員だって人間」
- 「客に謝ってもらいたいくらい」
…といった投稿が相次ぎました。
もちろん、警備員の対応が100%完璧だったとは言い切れませんが、
現場でトラブルをおさめようとしたことに対して、理解を示す人が圧倒的に多いのが今回の特徴です。
④客側の行動への疑問も広がる
一方で、怒っていた男性客に対する疑問や批判も増えています。
- 「わからないなら別の人に聞けばいいのに」
- 「警備員に何を求めてるの?」
- 「ただの案内役に“完璧なサービス”を期待しすぎでは」
といった意見が多く見られ、“怒る権利”と“言葉の暴力”は違うという感覚が、多くの人に共有されているようです。
誰もが忙しく働いている中で、ほんの小さなすれ違いが、大きな騒動に発展してしまった―
そんな空気を、誰もが少しずつ理解し始めているのかもしれません。
土下座事件が映し出した「社会の弱さ」
この出来事は、ただのトラブルや「変な客」の話ではありません。
むしろ、今の日本社会が抱えている“弱さ”や“歪み”を浮き彫りにした出来事だったとも言えます。
目の前で起きたひとつの土下座が、私たちに問いかけてくるもの――それを一緒に考えていきましょう。
①カスハラという言葉では片付かない
近年、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉が定着してきました。
サービスを提供する側に対して、
客が理不尽な要求や暴言をぶつける行為のことです。
今回のケースも「カスハラだ」と言う人は多くいますが、
同時に「警備員の態度も悪かったのでは?」という意見もあるんですよね。
つまり、これは単純な加害者・被害者の構図では片付けられないということ。
感情のすれ違いや、社会的なストレス、
「誰にどう伝えればよかったのか」が見えにくい状況が、こういうトラブルを生んでしまうんです。
②働く人の尊厳と責任の境界
警備員という仕事は、安全を守るための存在であり、
同時に「来場者の疑問や不安に答える案内役」としても期待されます。
でも、それはあくまで限られた範囲での対応であって、
「なんでも完璧にできて当たり前」ではありません。
現場のスタッフに求められるのは“神対応”ではなく、
最低限の説明と、丁寧な態度だと思います。
それ以上を求めるのは、“サービスの顔”に過度なプレッシャーをかけてしまう。
今回のように、それが土下座という行為にまで至るのは、
明らかに働く人の尊厳が守られていない状態です。
③誰が「助けるべき人」だったのか?
この場面で本当に必要だったのは、
「怒っていた男性」でも「土下座した警備員」でもなく、
その場にいた“周りの人”の行動だったかもしれません。
例えば、
- 客が怒り出したときに、周囲が「大丈夫ですか?」と声をかけていたら
- 警備員が土下座しそうになった瞬間に、誰かが止めていたら
- 動画を撮る前に、第三者が話を聞いていたら
…展開はまったく違うものになっていたかもしれません。
トラブルが起きたとき、
「誰かが助けてくれるはず」ではなく、「自分が動こう」という感覚が今こそ大切なんだと思います。
④スマホよりも、声かけの勇気を
動画を撮るのは、記録としては価値があるかもしれません。
でも、人が困っている場面で最初に取る行動が“撮影”でいいのか?という疑問も残ります。
万博という「人と人とがつながる場」で、
もし似たような場面に出くわしたら――
「録画ボタンを押す前に、“大丈夫ですか”と声をかける」
その一言が、未来の空気を変えるかもしれません。
土下座は、誰にとっても“心に残る”出来事です。
だからこそ、次に起きたときにどう動くかを、私たち一人ひとりが考えておくべきなんですよね。
万博を楽しむために私たちにできること
この出来事を知って、「嫌な気分になった」「万博のイメージが悪くなった」という人もいるかもしれません。
でも本当は、こんなトラブルこそ、私たちが“よりよく楽しむためにできること”を考えるきっかけになると思うんです。
ここでは、私たち一人ひとりが心がけたいことを、4つの視点からまとめてみます。
①正確な案内がなくても責めない
イベントの現場では、わかりにくいことやうまく伝わらないことが起きがちです。
その場にいるスタッフがすべてを知っているわけではありませんし、対応マニュアルにも限界があります。
そんなとき、「なんでわからないんだ!」と感情的になってしまうと、
現場の空気は一気にピリついてしまいます。
大切なのは、「じゃあ誰に聞いたらいいか教えてもらえますか?」と一歩引いた聞き方をすること。
相手も人間です。
思いやりのある言葉ひとつで、空気はずいぶん変わります。
②困っている人をそっとサポート
自分ではなくても、近くで困っている人がいたら、声をかけてみる。
これはとてもシンプルですが、実はなかなかできない行動です。
「余計なお世話かも」「巻き込まれたくない」という気持ちもわかります。
でも、ほんの一言「大丈夫ですか?」と聞くだけで、誰かの気持ちが落ち着くことってあるんです。
助け合いの気持ちは、お祭りやイベントの雰囲気をあたたかくする力があります。
③拡散よりも、行動できる第三者に
スマホですぐ撮れる時代だからこそ、
「その場に立ち会った第三者として、どう動けるか」を考えてみましょう。
- 係の人を呼ぶ
- 警察に連絡する
- 周囲に協力を呼びかける
こうした行動は勇気がいるけれど、
それが“見守る”から“一緒に守る”に変わるきっかけになります。
拡散することよりも、行動することのほうが、誰かの記憶に残ります。
④万博を「よかったね」で終わらせよう
せっかくの万博です。
世界中から人が集まり、日本を、未来を、楽しみにしているイベントです。
だからこそ、「あんなトラブルがあったよね」ではなく、
「楽しかったね」「思いやりがあふれる場だったね」という思い出で終われたら、それが一番だと思うんです。
そのためにできることは、大きなことじゃなくていい。
ちょっと気を配る、少し優しくする、それだけで空気は変わっていきます。
記事のまとめ
- 万博会場で起きた「警備員の土下座騒動」がSNSで大きな注目を集めた
- きっかけは駐車場案内の不備と、それに対する客の怒りだった
- 警備員が謝罪の意志として土下座に近い行動を取ったが、「土下座しろ」との強要は未確認
- 現場にいた第三者の証言からは、誤解や感情のすれ違いが原因である可能性も見えてくる
- SNSでは警備員への同情や、客側の言動に対する批判が多数寄せられている
- この出来事はカスハラだけでなく、「私たちの社会の在り方」そのものを問いかけている
- 今後は、周囲が冷静にサポートする行動や、拡散ではなく“声をかける勇気”が求められる